研究概要 |
【研究の目的】 現在の化石資源を原料にした化学工業プロセスを、植物由来バイオマスを原料した微生物発酵のプロセスに置き換えて環境負荷を低減したい。車載用プラスチックに必要な高性能のポリ乳酸を得るには、原料のL-乳酸に高い光学純度(99.9%)が要求される。乳酸菌を用いても高い純度のL-乳酸が得られないので、トヨタ自動車と共同して乳酸発酵を行う酵母の開発を行った。回分発酵で乳酸生産を行う予定にしているが、生産コストを低減するために、連続発酵を行う新規プロセスを開発していきたい。このプロセスには、定常期に入った後も長時間、代謝活性を維持して「静止菌体発酵」するという今までにない形質を持つ酵母が必要とされるが、通常の酵母では増殖期から定常期へ移行する時に、様々な代謝活性が大幅に低下するため、「静止菌体発酵」の実現には困難が予想される。 【平成17年度の実績】 (1)-1 抗生物質ハイグロマイシンを選抜マーカーにした遺伝子破壊用ベクターを構築し、ワイン酵母OC2株を宿主に開発した乳酸生産酵母に導入し、TOP1遺伝子をヘテロ及びホモで破壊した組換え酵母を作製した。破壊株の比増殖速度および発酵試験を解析した結果、両破壊株において増殖速度並びに発酵速度の低下が観察された。また発酵において、ホモ破壊株では乳酸生産量の低下が観察されたが、一方でヘテロ破壊株では、若干の生産向上が認められた。 (1)-2 TOP1破壊株の増殖速度は文献と同様に低下していたため、Δtop1形質をコントロールする必然性が増した。GAL1,GAL2,GAL4の発現を変化させてガラクトース誘導性を高めることに成功し、特許出願した。来年度にCre DNA組換え酵素による切り出し条件を詳細に検討した上で学会発表と論文投稿をする予定。
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