近年、ヘム濃度やヘムリガンド(酸素分子、一酸化炭素、一酸化窒素等)の濃度変化を感知して、これを細胞シグナルへと変換するヘムセンサーと呼ばれる新しいヘムタンパク質ファミリーが次々と見つかり、注目を浴びている。しかし、その分子レベルでのセンシング機構については不明のままである。 本研究では、大腸菌のヘムセンサータンパク質であるヘム制御ホスホジエステラーゼ(EcDOS)に着目した。ヘムセンサードメインについて、活性型であるヘム鉄還元型、ヘム鉄酸化型の両方についてその結晶構造解析を世界で初めて成功しており、現在、酸素結合型の構造解析も行っている。高分解能の結晶構造解析から、ヘムの酸化還元状態の違いによってヘムリガインドの交換が起こり、これがEcDOSヘムセンサードメインの三次元構造を変化させていることが明らかとなった。この構造変化がホスホジエステラーゼの活性を制御に関わっていることが強く示唆された。そこで、本研究ではヘムポケットを構成する疎水性アミノ酸を部位特異的変異法を用いて別のアミノ酸に置換し、その効果を検討した(FEBS Journal 2006 273 1210-23)。 更に一酸化炭素のヘムセンサーとして転写制御に関わっている体内時計関連転写因子NPAS2の機能解析も行った。NPAS2はアミノ末端領域にDNA結合部位を有し、続いて2つのヘム結合PASドメイン(PAS-A、PAS-Bドメイン)を有する。本研究では、PAS-Bドメインについて、ヘム結合、一酸化炭素結合等について詳細な解析を行った(FEBS Journal 2005 272 4153-62)。
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