研究概要 |
遊離脂肪酸(Free Fatty Acid : FFA)は多くの組織において生理的に重要な役割を果たしている。FFA誘導体であるプロスタグランジンやロイコトリエンは細胞膜に特異的なGタンパク質共役型受容体(GPCR)を持つことから、FFA(特に長鎖)も細胞膜上に特異的な受容体を持ち、それを刺激することによって細胞内情報伝達に寄与している可能性があると考えられてきた。最近、いくつかのグループが3つのオーファン受容体GPR40,GPR41,GPR43がFFAによって活性化されることを報告した。長鎖FFAをリガンドとするGPR40は、膵臓ラ氏島に多く発現し、FFAのグルコース刺激による膵β細胞からのインスリンの分泌増強に関わっていることが示されている。申請者らはこれらのグループとは独立に新たな長鎖FFA受容体としてGPR120を同定し、さらに、GPR120が腸管においてインクレチンの一つであるGLP-1と分泌細胞(L細胞)において共存し、FFAによるGLP-1の分泌に関わっていることを証明した(Hirasawa et al., Nature Medicine,2005)。本研究では、新規FFA受容体GPR120のシグナル伝達経路とその結果もたらされる生理現象の解明を目的として研究を行っている。今年度は、マウス腸管由来STC-1細胞においてFFAによるERKの活性化が血清飢餓等によって起こされる細胞死(アポトーシス)を阻害することを下記らかにした。また、このFFAによるアポトーシス抑制作用が、GPR120を介するものであることを明らかにした(Katsuma et al., Journal of Biological Chemistry,2005)。今後は、他の動物種(ヒト、ラット等)のGPR120オーソログをクローニングし、その機能解析を行う予定である。
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