研究概要 |
II型cGMP依存性プロテインキナーゼ(以下cGKII)は,その欠損マウスの解析から骨形成、特に軟骨分化において重要な役割を果たしていることが知られている。本研究では,軟骨分化におけるcGKIIの発現制御および情報伝達系の解明を試み,以下の成果を得た。 1.in vitro軟骨分化モデルであるATDC5細胞を用いて軟骨分化におけるcGKIIの遺伝子発現パターンを解析した。その結果,未分化な細胞では発現は認められなかったが,分化が進行するにつれてその発現は上昇し,成熟軟骨ステージから肥大化軟骨ステージにかけて最も高い発現を示した。また、このモデル細胞をcGK特異的な阻害剤であるKT5823で処理すると軟骨分化が阻害された。これらの結果より,cGKIIは軟骨分化に必須であり,その発現制御の解明が重要であることが明らかとなった。そこで,cGKIIのプロモーター領域を同定し,現在,軟骨分化におげるcGKIIの発現制御に関わる転写因子の同定を試みている。 2.酵母two-hybrid法によりcGKIIと特異的に相互作用するタンパク質の同定を試みた。ヒト軟骨cDNAライブラリーより,filamin AとPINCH 2の2種類のタンパク質が同定された。同定された2種類のタンパク質はともに膜に局在し,cGKIIと同様な細胞内局在を示した。filamin AとPINCH 2はこれまでに多くのタンパク質と相互作用することが報告されており,その中にはcGKIIの基質の候補となるものも報告されている。また,filaminの変異は骨の異常をきたすことが報告されている。cGKIIはこれらのタンパク質を足場として基質のリン酸化を迅速かつ正確に行い軟骨分化を制御している可能性が推測された。現在,得られた情報をもとに軟骨分化におけるcGKIIの真の基質の同定を進行中である。
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