研究概要 |
本研究の目的は、分子間ループ挿入という独特の立体構造変化によりポリマー化し、コンフォメーション病を引き起こすセルピン蛋白質の立体構造解析である。本年度は若年性痴呆症の病原セルピンであるニューロセルピンをモデル蛋白質とし、以下のような成果を得た。 (1)野生型ニューロセルピンの結晶化:大腸菌で発現させたニューロセルピンをsitting drop蒸気拡散法により結晶化することに成功した。得られた結晶をSpring-8-BL38B1ビームラインにて1.0ÅのX線で解析した。その結果、分解能=35Å,空間群=I2_12_12_1,セル(a,b,c,α,β,γ)=(171.5,171.5,246.5,90.0,90.0,90.0),反射数=362591.0,独立反射の数=46620.0,完全性=97.2%,I/δ=6.2,R_<merge>=11.3%,非対称単位の数=8,というデータを得た。 (2)病原性ニューロセルピン変異体G392EおよびH338Rの調製と緒性質の解明:病原性ニューロセルピン変異体のうち、13〜15才という最も若年で痴呆が発症するG392EおよびH338Rについては、凝集しやすいために精製が非常に難しく、現在のところin vitroの研究報告は全く無い。代表研究者はこの両変異体の大腸菌発現系を構築し、人工シャペロンを用いたRefblding法により、極めて困難な両変異体蛋白質の精製に成功した。得られた変異体を解析した結果、G392E,H338R共に活性型であること、G392Eのポリマー化速度(t_<1/2>=0.5h)とTm値(52.8℃)を決定し、G392Eが迅速にLatent型という熱安定型立体構造異性体に移行することを明らかにした。またH338Rについては、ポリマー経路の途中で安定な二量体を蓄積することを示した。
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