研究概要 |
本研究の目的は、分子間ループ挿入という独特の立体構造変化によりポリマー化し、コンフォメーション病を引き起こすセルピン蛋白質の立体構造解析である。本年度は若年性痴呆症の病原セルピンであるニューロセルピンについてX線結晶構造解析を行い、以下の成果を得た。 1.野生型ヒト・ニューロセルピンの結晶化:天然型については、昨年度は3.5Åの分解能の結晶しか得られなかったが、結晶化条件を再検討し、分解能3.0Åのデータを得、解析することができた。その結果、ニューロセルピンは他の同属のセルピンよりもC末端部が10残基分ほど長く、ループの受け手であるシャッタードメインが開きやすい構造になっており、そのため、他のセルピンに比してポリマー化速度が極めて速いこと、自己のループを挿入するLatent型構造をとりやすいことなどを明らかにした。現在その成果を公表するための研究論文を投稿中(The Jounal of Biological Chemistry)である。 2.ニューロセルピンC末端除去変異体の諸性質の解析と結晶化:上記1の結果を基に、C末端側を10残基削除したニューロセルピン変異体D10を調製し、その緒性質を調べた。その結果、D10は、阻害活性,二次構造組成(CDによる解析),ポリマー化の活性化エネルギー,Tm値については野生型とほぼ同じであったが、野生型比べ凝集性が低く、Refolding効率も高いことが明らかとなった。現在、D10についても結晶化に成功し、3.0Åの分解能でのデータを得ている。
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