未分化な植物細胞内のイソプレノイド生合成経路の解析のため、シロイヌナズナT87培養細胞をモデルとして用い、その中の2つのイソプレノイド生合成経路の代謝物を選択的かつ効率的に13C標識化するシステムを構築した。 1.先ず、色素体MEP経路に特異的な阻害剤ケトクロマゾンにより培養細胞が白化する最低濃度と、これを回復できるMEP前駆体(DX)濃度を決定した。次に、細胞質のメバロン酸経路の阻害剤であるメバスタチンにより細胞増殖がほぼ完全に阻害される濃度と、これを回復できるMVA前駆体(MVL)濃度を決定した。 2.このDXおよびMVLをそれぞれ13C-ラベル体に置き換え、イソプレノイドの標識実験を行った。MEP経路のモデル代謝物としてα-トコフェロール、メバロン酸経路のモデル代謝物としてカンペステロールへの取り込み率をGC-MSで調べた。その結果、上記の濃度条件下で、13C-DXによってMEP経路代謝物を、13C-MVLによってメバロン酸経路代謝物をそれぞれ選択的かつ高効率(約90%)で標識化することに成功した。 3.次に、色素体の分化に重要な役割をもつイソプレノイド植物ホルモンであるサイトカイニン(CK)の生合成経路について検討した。先ず、T87培養細胞のCK内生量を調べたところ、シロイヌナズナ芽生えに比べて活性型のトランス-ゼアチン(tZ)型CKが著しく減少している一方、同じく活性型でありtZ型の前駆体でもあるイソペンテニルアデニン型CKが顕著に増加していることを明らかにした。また、シス-ゼアチン型CKも増加していた。 4.このT87培養細胞のCK生合成経路を上記の選択的な13C標識システムを用いて調べた結果、tZ型とcZ型の13C標識パターンが、既に申請者が報告したシロイヌナズナ芽生えの場合と異なることを発見した。現在、このCK生合成経路を詳細に検討している。
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