ブラシノステロイドは植物必須のステロイド性生長促進ホルモンである。研究代表者らは、最近、最も活性の強いブラシノライドの生合成の最終段階を触媒する酵素の発見に成功した。その研究によって、トマトにおいてブラシノライド合成酵素(CYP85A3)は生殖生長期に、その前駆体であるカスタステロンの合成酵素(CYP85A1)は栄養生長期に働いていると仮定された。そこで、本研究ではブラシノライドの果実生産における役割について分子生物学的手法を駆使して明らかにすること目的としている。本年度の主な研究成果は下記の4つである。 1、CYP85A3過剰発現体において果実肥大効果などが現れるかを調べるために、35S恒常的発現プロモーターにCYP85A3遺伝子を結合させたベクターを構築し、トマトの形質転換を行った。この研究はロンドン大のGerard Bishop博士の協力で行われた。 2、CYP85A3遺伝子の発現を精査することにより、ブラシノライドが働く場所を突き止めるために、CYP85A3遺伝子のプロモーター領域の単離を試みた。3kbの候補遺伝子断片を単離したので、レポーター遺伝子と結合させ、トマトに導入する予定である。 3、CYP85A1とCYP85A3のアミノ酸配列は85%の高い相同性をもつ。15%の相同性の違いにブラシノライド合成の最終反応であるバイヤービリガー酸化に必要な配列が存在している。そこで、CYP85A3配列をもとにCYP85A1に点変異を導入し、そのタンパク質を酵母で発現させて酵素活性を調べた。この研究は東大の久城哲夫助手の協力で行われた。 4、エンドウより単離された二つのCYP85A遺伝子を酵母において発現させ、その酵素機能を調べた。これらの酵素もトマトのCYP85A酵素と同様にブラシノステロイドのC-6位酸化酵素であることを明らかにした。
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