研究概要 |
日本茶葉に寄生する白星病菌Elsinoe Leucospolaは,菌体外に「エルシナン」と呼ばれるα-グルカンを生産する.その結合様式プルランに酷似し,α-(1→3)およびα-(1→4)の2種類から成る.エルシナンはElsinoe LeucospolaをPotato Extract培地またはCSL培地で培養すると大量に生産された.その収量は,炭素源をスクロースとしたときが最も多く,液体培地1リットルあたり6.0gのエルシナンが得られた.なお,Potato Extract培地のほうがCSL培地よりもエルシナンの収率が高くなる傾向が見られた.ガスクロマトグラフィー,薄層クロマトグラフィー,およびメチル化分析の結果,得られた多糖はα-(1→3)とα-(1→4)結合のグルコース残基を2:1の割合で含むことがわかった.得られたエルシナンの重量平均モル質量が1.2×10^6,重量平均分子量を数平均分子量で除した多分散性指数が1.8という結果が得られた.決定された重量平的モル質量は,プルランの値よりも6倍程度大きい.モル質量>1×10^4では,水溶液中におけるエルシナンの回転半径および固有粘度のモル質量依存性はプルランと誤差範囲内で一致した.しかし,プルランとエルシナンは水への溶解性や濃厚溶液の粘度特性,ゲル化特性が著しく異なることが知られている.そのような性質は,エルシナンの分子間にプルランには存在しないような特殊な相互作用が働いているためと考えられる.
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