研究概要 |
本実験ではCDによる種々の機能性を有する芳香族化合物の包接を試み、その包接挙動を蛍光スペクトル測定により詳細に検討した。CDとして、α-、β-、γ-CDを使用し、モデル化合物としてcinnamaldehyde, raspberry ketone, eugenol, caffeic acid, ferulic acidを選択した。 10%エタノール溶液中での包接挙動を検討した結果、いずれの化合物もCD濃度の増加に伴い蛍光強度が増加する傾向が認められ、CDにより包接可能であることが判明した。続いて、得られた結果を基に結合定数(K)の算出を試みた。K値の算出には、CD濃度の逆数に対して蛍光強度増加量の逆数をプロットするBenesi-Hildebrand plot(BH-plot)を用い、得られた近似直線のy切片を傾きで割ることによってK値を求めた。その結果、いずれの場合もプロットが2本の直線により構成され、CDが低濃度の場合には[CD]:[Guest]=1:1の、高濃度では2:1の包接体が形成されることが判明した。なお、1:1包接体のK値は2:1の包接体のものより1オーダー高い結果であった。cinnamaldehydeのK値はα-CD<β-CD<γ-CDの順となったが、eugenolではβ-CDでのK値が最も高い結果となり、化合物により最適なCDが異なることが判明した。またK値はエタノール濃度の増加、あるいは温度の増加に伴い減少する結果となった。さらに、化学計算ソフトを用いて各化合物のlog P値(1-octanol/H_2O分配係数)を算出し、各化合物のK値をlog Pに対してプロットした。その結果、いずれも相関係数0.9以上の良好な相関が得られたことから、本実験で用いた化合物に関しては、log Pすなわち化合物の疎水性を考慮することによりCDに対する包接性を評価可能であることが示された。
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