1.アントシアニンの脳内酸化ストレス軽減作用の解明:ラットを利用した場合、動物実験に耐えうる量のアントシアニン標準品の入手が難しい為、17年度はマウスの脳虚血再灌流障害モデルの確立を試みた。しかし総頚動脈結紮時のマウスの致死率が高く、マウス脳虚血再灌流モデルの確立は為されなかった。今後は脳虚血実験に汎用されている砂ネズミの利用を試みたい。 2.アントシアニンの脳内分布の解明:アントシアニンの脳内分布を検討するために必要なアイソトープラベル体を作成する為、ブラックカーラントの分化細胞の継体を繰り返しアントシアニン産生カルスの誘導を試みた。しかし、色素を産生するカルスを誘導するには至らなかった。カルスより産生されるアントシアニンは植物種によらず、主にcyanidin 3-glucoside(Cy3G)である事から、今後はCy3Gに限定し、既に誘導されているアントシアニン産生カルスの利用を計画している。本年度はアイソトープラベル体の作成と並行して、コールドのCy3Gを用いたアントシアニンの脳内分布についても検討を行った。本年度は脳毛細血管に残存する血液を除去する為の脳灌流法の条件を検討し、ほぼ確定する事が出来た。Cy3Gをラットに静脈内投与した場合、灌流後の脳内にCy3Gを検出した事からCy3Gが血液脳関門を通過して脳内に取り込まれる事が明らかとなった。現在、経口投与後のCy3Gの脳内分布について検討を進めている。一方、アントシアニンは化学的に不安定である事から生体内で分解し、プロトカテキュ酸(PC)が多量に生成し、血中に分布する事が報告されている。PCがCy3Gの脳保護作用に寄与する可能性があるため、Cy3G経口投与後のPC生成量について検討を行ったが、血中にPCは検出されなかった。この事はPC以外のCy3G分解物が腸管内で生成している可能性を示唆しており、分解物の同定を進めている。
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