大豆タンパク質とイソフラボンを単独または同時摂取したときの脂質代謝への影響を明らかにするため、肝臓と脂肪組織での脂質代謝関連酵素の活性とmRNA発現量を測定した。 SD雄ラットの肝臓では、大豆タンパク質はカゼインと比べ脂肪酸合成系酵素の活性とmRNA量を低下させ、イソフラボン添加も両タンパク質で酵素活性を減少させた。しかし脂肪酸合成系の転写因子ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)-1cのmRNA量は変化しなかった。一方、脂肪酸酸化系の転写因子ペルオキシソーム誘導剤活性化受容体(PPAR)αは大豆タンパク質およびイソフラボン摂取により増加した。脂肪酸酸化系酵素の活性とmRNA量はイソフラボン添加により増加が見られたが、食餌タンパク質源の影響は小さかった。褐色脂肪組織では脱共役タンパク質(UCPs)のmRNA量は大豆タンパク質食群で増加し、イソフラボンは0.4%添加で両タンパク質群ともこれらの値を増加させた。脂肪細胞分化に関わるPPARγのmRNA量は白色脂肪組織でイソフラボン0.4%添加食により減少し、褐色脂肪組織では大豆タンパク質群で増加した。 肥満モデルのZucker fa/fa雄ラットでは、イソフラボンは白色脂肪組織のレプチン、リポタンパク質リパーゼ(LPL)、PPARγのmRNA量を増加させたが、褐色脂肪組織ではレプチン、LPLとグルコース輸送体4遺伝子のmRNA量をむしろ低下させた。食餌タンパク質の種類は、両脂肪組織でのこれらの値を変化させなかった。 食餌タンパク質の種類とイソフラボンは脂肪組織と肝臓での脂質代謝関連遺伝子の発現量を変化させることが示され、肥満ラットと正常ラットとではその応答が異なる場合があった。しかし両成分による脂質代謝変化に対する明確な相乗作用は見られなかった。
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