海岸部で主要な塩であるNaClを構成するナトリウムイオン(Na^+)、塩化物イオン(Cl^-)が外生菌根菌のコツブタケに与える影響を調べた。海岸クロマツ林由来のコツブタケ2菌株Pt0、Pt3を用い、NaCl、Na_2SO_4、CaCl_2を添加した異なる5段階の濃度に調整したMMN液体培地上におけるコツブタケの菌体重量を調査した。その結果、培養終了時における塩添加区の菌叢面積は、塩の種類に関わらず0mMのものと比較して減少した。NaCl濃度で培養したPt0、Pt3の菌体重量は、50mM、200mMで最大となったが、200mMから500mMにかけては急激な減少がみられ、500mMの菌体重量は0mMのものより有意に減少した。Na_2SO_4添加区の菌体重量の変化は菌株間で同様の傾向を示した。100mMから250mM濃度間で有意な減少を示したが、250mM(500mM Na^+相当)における菌体重量は0mMのものと有意差はなかった。CaCl_2添加区では濃度間における有意な重量変化はなかった。以上から、Na^+は高濃度においてコツブタケに対してイオン毒性を有すると考えられた。Cl^-のイオン毒性は明らかにできなかったが、これは共存するCa^<2+>の影響と考えられた。 クロマツ菌根の垂直分布を明らかにするための予備調査として、海岸クロマツの根系分布を調査した。土壌断面を作成し、10cm深ごとに土壌を190cm採取し、菌根数を計数した。その結果、最も多くの菌根が分布したのは、深さ10-20cmで全体の43%を占めた。また菌根は100-110cmの深さまで確認されたが、それ以深では認められなかった。以上より、菌根の垂直分布を明らかにするためには、100cm深までを対象に行うことが本調査地では適切であると判断された。現在、土壌深ごとに潜在する菌の把握を行うため、釣菌法による菌根形成実験を遂行中である。
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