広義Cercospora属菌による針葉樹の病害の診断と系統関係推定に関する研究として、我が国に記録のある広義Cercospora属の形態およびnDNA塩基配列による所属の再検討を行った。その結果、各領域の解析では、MPTree、NJTreeともにスギ赤枯病菌(C.sequoiae)はPassalora属菌と一つのクレードを形成し既報のPassalora属への転属を支持した。スギ列いぼ病菌(Pseudocercospora cryptomeriicola)は大きなPseudocercospora属のクレード内に位置し筆者らの転属処理を支持した。またセンペルセコイア葉枯病菌(P.exosporioides)はPseudocercospora属のクレード内に位置した。その他、報告者が新種として公表したヒメコマツ上のScoleeostigmina chibaensis、スギ葉枯病菌(P.pini-densiflorae)が単独の一つのクレードを形成した。しかしながら、28S領域解析では解析に用いたデータが少ないことから、データを加え、これらの結果が維持されることを確認する必要がある。また、基準標本の形態的特徴からヒノキ葉枯病菌(C.chamaecyparidis)が転属の必要があることを確認し、鹿児島県で採集されたスギ上のCercospora関連属菌が海外で既に報告のある菌であることを認めた。以上結果から針葉樹上に発生するCercospora関連属菌による各種病原菌はそれぞれ別種であることが形態学的にも、分子生物学的にも支持された。またDNA塩基配列を用いた病原菌の種の推定による病害の早期診断の可能性が高まり、かつ針葉樹上に発生するCereospora関連属菌の遺伝的多様性が明らかになった。
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