研究課題
森林生態系の窒素循環において、植物による窒素の吸収は重要な過程の一つである。植物は主要な窒素源として土壌中のアンモニア態窒素・硝酸態窒素を吸収し利用しているが、このうち硝酸態窒素には土壌に吸着されず流亡しやすいという性質がある。そのため、生態系を構成する植物種の硝酸態窒素利用に関する特性は系内の窒素循環、ひいては森林の持つ外部に対する緩衝機能においても重要である。植物の種により、硝酸態窒素を利用する能力は著しく異なる。これまでに、木本・草本植物を併せて30種以上の植物について、硝酸還元酵素活性を指標として硝酸態窒素を利用する能力を調査してきた。本研究では森林生態系を構成する植物のうち、ササ(ミヤコザサ)・シダ類(ウラジロ・コシダ)を対象として硝酸態窒素を利用する能力の把握を試みた。結果から、これら3種は硝酸態窒素を利用する能力を持つこと、特にササは硝酸態窒素に対して強く依存している可能性があること、硝酸態窒素同化の季節変化のパターンは種によって異なるものの、3種ともに冬季(2月)に高い酵素活性を示すことなどが明らかにされた。また、硝酸態窒素を利用する能力に加え、硝酸態窒素を蓄積する性質も種によって大きく異なり、今回対象とした3種ではササが多量の硝酸態窒素を蓄積することが明らかにされた。日本国内では野生植物の硝酸態窒素利用に関する研究自体が少なく、窒素酸化物の加入を含む環境変動に対して生態系が示す反応に関する情報が求められる中で、本研究は新たな知見を提供した。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (4件)
IARAC/JAXA Terrestrial Team Workshop : Monitoring the Influence of Large Alaskan Forest Fires on the Terrestrial Environment
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第53回日本生態学会大会講演要旨集
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Abstracts of the 2nd Scientific Congress of East Asian Federation of Ecological Societies
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