地形の違いにともなう森林構造の変化を調べるために、長さ150mにわたり5mおきに全天空写真を撮影し開空度を算出した。この150mのラインは尾根から谷へ下り、そこからまた別の尾根まで上るという形で様々な微地形を含む様に設定されている。開空度は大きな傾向としては尾根や斜面上部で大きく、谷や斜面下部で小さいと言えた。谷付近での開空度の減少は谷地形という低い開度の影響、高い樹高のもとに形成される階層構造、さらにはイルカンダなどの大型ツル植物の葉による林冠の被覆などが原因として考えられる。 樹木の樹冠の形状の変化は種や環境条件により異なったが、種によっては立木密度や光環境に対応して変化するものもあった。地形による樹冠の形状の変化は明瞭ではなかった。尾根付近では立木密度が高いが樹高が低い、谷付近では立木密度は低いが樹高は高いという傾向に依存したパターンが内包されている可能性もあり、サンプリングデザインに検討の余地がある。解析方法を含めた検討が必要である。 イルカンダのツル部分の胸高断面積合計は立木の5%にも満たなかったが、リターフォール量は立木で最も優占度の高いイタジイよりも多かった。イルカンダが林冠を覆うことで林分あたりのりターフオール量が増えるのかは、同様の立地環境でイルカンダが生育しないサイトとの比較研究が必要となる。 また、イルカンダはリターフォールによる林床への有機物供給量が多いだけでなく、マメ科植物であるためリター中の窒素含有量も他種と比べて約2倍程度と多く、林床に供給される窒素量への寄与は有機物供給量の寄与よりも大きくなった。
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