沖縄島北部の亜熱帯常緑広葉樹林において、樹木の形態的特徴の種による違いや種内での可塑性が森林構造の多様性を形成すること、またそれらが樹木にとっての環境の不均一性を創出し、樹木の形態的特徴が変化することを、様々なスケールで示した。景観スケールでは、地形に応じた樹幹形の変化が種により異なることで優占種が入れ替わることを示した。同じ立地環境においても、個体密度や光環境に応じて樹冠形が変化することも示した。この変化のパターンは種や個体サイズにより異なっており、森林構造の不均一性の形成がさらなる不均一性に繋がるというメカニズムが示唆される。個葉レベルにおいても形態の可塑性は種により異なった。地形により樹幹形を大きく変化させるイジュやフカノキは葉のサイズ、形状の変化が大きいが樹幹形の変化が小さいイタジイやイスノキの葉の形態の変化は小さかった。 この亜熱帯常緑広葉樹林においては立木だけでなく、ツル植物の森林構造形成への寄与が大きいことを示した。立木を対象にした毎木調査では測定されないツル植物は、特に斜面の下部や谷部で、林冠の主要な構成者となっていることが明らかとなった。ツル植物が有する物質生産機能、リターフォール生産能は非常に大きく、イルカンダ(マメ科)は谷部においては、森林全体では60%以上の優占度を持つイタジイよりものリターフォール生産力が大きいことが示された。さらにイルカンダはリター中の窒素含有量も多種と比べて2倍程度と多く、地上部構造から林床に供給される窒素量への寄与が非常に大きいことが示された。森林構造の不均一性は物質循環という観点からも生態系の不均一性を創出することで生物多様性の維持に寄与している可能性が示された.
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