茨城県かすみがうら市の30年生スギ人工林において、平成18年12月に開始した試験地土壌の加温処理を継続し、加温区と無処理の対照区において深さ0-20cmの細根生産量および消失量(枯死・脱落量)をミニライゾトロン法(地中に埋設した透明管の表面に出現する根を観察する方法)により解析した。 冬季(12月〜2月)、春季(3月〜5月)、夏季(6月〜8月)、秋季(9月〜11月)における加温区の地温は平均して約12、16、26、24℃であり、対照区の約7、11、21、16℃に対して+5〜8℃の温度に維持することができた。 1ヶ月に一度の頻度でミニライゾトロン上の細根を専用のカメラ(BTC100X、 Bartz Technology社)で撮影し、根系画像解析ソフトウェア(WinRHIZO Tron MF、 Regent社)を利用して細根長の動態を測定した。その結果、冬季、春季、夏季、秋季のミニライゾトロン上の細根生産量は加温区で約60、40、60、100mm/tube、対照区では約10、30、20、30mm/tubeであった。これらの結果は、現在の地温からの5〜8℃程度の地温上昇は細根生産量を増加させ、その影響が冬季に最も顕著に表れることを示唆している。また、春季から秋季の生育期間中では、地温上昇の影響は秋季に大きいことが示唆された。平成18年12月から平成19年11月にかけての1年間の細根生産量は加温区で約270mm/tubeで、対照区(約90mm/tube)の約3倍であり、同期間の細根消失量は加温区と対照区でそれぞれ約160、40mm/tubeであった。これらの結果は、現在の地温からの5〜8℃程度の地温上昇は細根生産量だけでなく、細根消失量の両者を増大させる可能性を示唆している。
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