1.ヒノキ影響下及び落葉広葉樹影響下の土壌を対象に、エタノール濃度法で風乾状態での撥水性強度を測定及びX線光電子分光法(XPS)による土壌団粒外表面の化学分析を行い、以下を明らかにした。 (1)土壌有機物は土壌団粒の内部より外表面に多く、外表面における炭素の存在比は必ずしも全炭素含有率に比例しない。 (2)乾式燃焼法による全炭素含有率は、ヒノキ影響下試料と広葉樹影響下試料の撥水性強度を十分に説明しなかった。これに対して、XPSによる団粒外表面の炭素と酸素の組成比は、両試料の撥水性強度をよく説明した。このことは、土壌の撥水性には土壌有機物の存在形態が影響することを示している。 (3)ヒノキ影響下の撥水性の強い試料の表面には、広葉樹影響下の撥水性の弱い試料と比較して、化学シフトの小さい炭素成分がより多く存在した。化学シフトの小さい炭素成分とは、酸素や窒素のような電気陰性度の高い元素と結合していない無極性の有機物の炭素に相当する。 (4)土壌の撥水性には有機物の質が影響し、土壌団粒外表面における化学シフトの小さい炭素成分と酸素の組成比は、撥水性強度を強く規定している。 2.ヒノキ人工林土壌を複数の乾燥状態に調整し、水分状態と撥水性強度の関係を調べた。その結果、対象土壌の撥水性は、土壌のマトリックポテンシャルが約-35kPa以下で現れ、約-300kPaで最も強くなることが明らかになった。
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