研究概要 |
本年度は研究の初年度であり,試験地に風速計やリタートラップ等を設置し,データの取得を開始した.試験地は,予定どおり,茨城県北部にあるブナ・コナラ自然林内で,クリの木が単木的に生育している2斜面である.これら2斜面は,渓流をはさんで互いに向かい合っている.当初の計画では,面的な落葉移動を調べるために,調査斜面を10m×10m程度のメッシュに区切って観測を行う予定であったが,この方法では調査労力が大きいことや散布モデルに適したデータが得にくいことから,観測対象木から放射状にトラップやコドラートを配置するレイアウトに変更した.また,落葉移動の重要な営力と思われる風について検討するため,谷底にある既存のタワーの他,2つの調査斜面上に1基ずつ高さ4.3mのタワーを建設し,4.3m,1.0mの2高度において風速測定を開始した(落葉開始前の9月頃). 以前の研究では,右岸側斜面の方が左岸側より急傾斜であるにも関わらず,落葉移動が不活発であり,この原因が風の吹き方に違いに起因するのではないかと推察された.現時点では,またデータの解析はあまり進んでいないものの,新たに設置した風速計のデータから,左岸側斜面と右岸側斜面で風の吹き方に大きな違いがあることはほぼ確実であり,林内風速の空間的不均一性が落葉移動を強く規定していることが一層明らかになってきた.現地での観測は今年度がメインであるが,これまで順調にデータが取れており,次年度にデータの解析を行う予定である.
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