森林の景観は、優占する木本植物によって特徴づけられるが、森林主要構成種である樹木の葉や芽を摂食する植食性昆虫と、これらを攻撃する捕食寄生性昆虫が、その多様性の中心を担っている。昆虫の全種数のうち、植食性昆虫が25%、捕食寄生性昆虫が20%という推定があることから、植食性昆虫-捕食寄生性昆虫系の多様性の高さが示されている。つまり、森林の生物多様性は、樹木-植食性昆虫-捕食寄生性昆虫の系を調べることで、理解されるだろう。2種の植物(樹木)上に79種の植食性昆虫が生息し、そのうち36種に合計81種の捕食寄生性昆虫が寄生している系を論文としてとりまとめた。これらの結果から、捕食寄生性昆虫群集は、寄主植物よりも、寄主である植食性昆虫のギルド(摂食様式に応じた生態的グループ)に対応して、形成されていることが示された。つまり、特定の種の捕食寄生者のうち、さまざまな種類の植食性昆虫に寄生する場合でも、その寄主は特定の摂食様式を持っていることが明らかになった。これらの結果は、従来から、捉えられていた捕食寄生性昆虫の群集観と反するものではないが、初めて野外研究として示された。さらに、この視点から、自らの研究を含む、これまで世界的に行われた研究をレビューしたところ、上記と類似したパターンが確認できた。本研究から得られた知識は、生物的防除を行う時のターゲットとなる寄主以外の在来種への影響を予測することにつながりうる。また、栃木県二宮町の鬼怒川河川敷において、ヤナギ属植物上の昆虫群集に関する野外調査を2007年5月から10月にかけて月1回行い、上記の仮説についての検証の肉付けを行った。
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