研究概要 |
本年度は北海道北部の北大・雨龍研究林内に,森林樹冠上にスペクトルメータを設置して,冠雪状況に応じた分光反射特性の観測を実施した.しかしながら,冠雪状態を記録するインターバルカメラの故障により,十分な観測データの記録は,平成19年度の観測によって得られるものと期待している.また,陸面モデルを用いてレナ川流域における冠雪量の推定を行った.その結果,積雪冬季に12月〜3月までのかなり長期間に渡り,レナ川流域の50%以上の森林樹冠上に冠雪が存在することが示唆された.また,樹種の違いによる冠雪量の変動が大きいことが分かった.陸面モデルと分光反射データを活用した冠雪量推定への研究を進める予定である. 防災科学技術センター・雪氷防災研究センターの人工降雪実験装置を用い,定常条件下でアカエゾマツとダケカンバの2樹種について,降雪量と樹体着雪量の関係を実験により求めた.アカエゾマツの最大樹体着雪量は,LAI(葉面積指数)の増加に伴い,指数関数的に増加する事が分かった.一方,ダケカンバの場合は,枝や幹の面積の総和(PAI)の増加に伴い,線形の関係で増加する.このことより,常緑針葉樹と落葉広葉樹では,単に葉が多い,あるいは枝が多いなどの定性的な議論を超えた,普遍的な関係を導くことが出来,森林の冠雪害などの被害軽減と,水資源の安定供給にとって,適切な森林管理の提言を行える基礎データを取得できたと考える.本実験結果が自然環境下でも適用可能か,今後樹体着雪モデルの構築と応用を通して確認していく予定である.
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