今年度は、スギ花粉の主要アレルゲンCry j 1とCry j 2のうち、主にCry j 1についてアイソフォームの探索を進めた。東北育種基本区、関東育種基本区、関西育種基本区、九州育種基本区のスギ精英樹269クローンを対象に、塩基配列の変異を高感度で検出可能なSSCP(Single-Strand Conformation Polymorphism)分析により、Cry j 1をコードする領域における塩基配列の変異を調べた。高い精度で変異を検出するためには、SSCP分析に使用するプライマーを保存性の高い領域に設計する必要がある。そのため、これまでの研究の結果から、異なるアイソフォームを生産すると推定されている精英樹7クローンについて、ゲノム中のCry j 1をコードする領域をクローニングし、塩基配列を決定した。決定された塩基配列に基づき、Cry j 1のエキソンの全領域をカバーする5種類のプライマーセットを設計し、そのうち4種類を用いてSSCP分析を行い、SSCP分析で多型の検出が困難であった1種類についてはダイレクトシークエンスにより塩基配列を決定した。その結果、異なるバンドパターンを示したクローンについて、SSCP分析で増幅されたフラグメントの塩基配列をダイレクトシークエンスにより決定し、アミノ酸置換の有無を推定した。その結果からアミノ酸配列の異なるアイソフォームを生産すると考えられたクローンについて、Cry j 1のmRNAを単離して塩基配列を明らかにし、アイソフォームの発現を確認するために、雄花を採取した。さらに、アイソフォームの特性を調査するために、これらのクローンの花粉を採取した。また、ゲノム中のCry j 1遺伝子の塩基配列の決定に用いた7クローンを対象として、Cry j 2をコードする領域についてもクローニングを行い、塩基配列を決定した。
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