本研究は、細胞工学的育種を魚類へ適用することを目的としている。具体的には、育種の素材として始原生殖細胞(PGCs)に注目し、PGCsに対する細胞工学的技術の開発を目指している。 平成17年度では、以下の項目に重点を置き、研究を行った。 1、機能的なPGCsを大量に分取する手法の開発 (1)PGCs分取法の確立 ひとつの胚に含まれるPGCsは極めて少ない。そこで、PGCsを解析し操作するために、これらの細胞を濃縮し純化する必要がある。ゼブラフィッシュ、キンギョ、ドジョウのPGCsをGFP-nos1 3'UTR mRNAの顕微注入により標識し、セルソーターを用いての大量分取技術の開発を行った。その結果、純度98%以上の割合でPGCsを精製することができた。 (2)大量に調整したPGCsの機能解析 一般的に、大量分取した細胞はダメージにより細胸機能を失う場合が多いことが知られている。そこで、分取したPGCsを他胚へ移植することにより、移動能が保持されているか否かの検討を行った。その結果、分取・移植したPGCsも宿主の生殖巣へと移動したことから、これらのPGCsは完全な細胞機能が保持されていることが明らかとなった。このことは、本研究で確立したPGCs分取条件が適切であったことを示している。 2、PGCsに関する基礎的知見の集積 キンギョの様々な発生段階のPGCsを単離し、胞胚期宿主胚に移植することにより、PGCsの移動能と発生段階との関係を詳細に調べた。その結果、PGCsの移動能はPGCsに内在する要因によって制御されていることが明らかとなった。このような知見に関しては現在までどの動物種においても報告はない。この結果は、現在、投稿準備中である。
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