研究課題
平成17年度の計画に従い、確率微分方程式を用いたメタ個体群の基本モデルを構築した。基本的な要素として、棲息地の大きさ・棲息地間の環境相関・移動を取り入れて、全体の面積が一定という制約のもとで、絶滅待時間を最大にする棲息地の分割を考えた(SLOSS)。移動率が0で環境相関が0の場合、解析的な方法で最善の生息地分割を導くことができ、個体数の変動係数CVに対して最適分割数はExp[CV^2-γ]となる。野生生物の現実的なCVの値はおよそ0.2-0.9程度であることから、移動率が0で環境相関が0の場合は生息地は分割しない方がよいと言える。一方、移動率が十分に大きい場合の最適分割についても解析的に示すことができるが、この場合はできるだけ分割を多くした方がよいことが明らかとなった。中程度の移動率については数値計算を行い、移動率に閾値があり移動率が大きくなるとともに最適分割数が1から無限大に急激に変化することがわかった。また、環境相関については、相関が大きいほど移動率の効果を受けにくくなり最適分割が1の領域が広くなる。さらに、移動のパターンや棲息地選択(理想自由分布)をモデルに導入するために、実際にウグイを用いて産卵生息地の選択性についても明らかにした。生息地間の移動パターンは分断化によるリスクの増大に大きく影響すると考えられる。また、次年度に予定していた禁漁区の効果についても研究を開始し、絶滅待ち時間・年平均漁獲量・累積漁獲量のどの基準においても予想外に、禁漁区方策よりむしろ通常の漁獲の方が優れていることまでがわかった。
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Journal of Ethology (In press)