前年度に引き続き、フランス資本主義と農業、農村の動向や相互の関連性などの把握に努めた。特に、当時、重要な課題であった村落の資源管理に焦点を当てて調査、分析を行った。比較的緩慢であるとはいえ、フランス資本主義は19世紀に展開を見せ、農業の地位は徐々に低下していったが、そうした中、農村でも資源開発が進められた。しかし、適切な資源管理が行われず、問題視される場合もあった。こうした動きは、フランス農業生産の動向や資本主義の中での農業の位置づけの変化と密接に関連しており、このような資源管理の問題を通して、フランス農村が資本主義の展開の中でどのような影響を受けたのかについて検討しようとした。 まず、資源管理において重要な役割を果たしていた土地改良組合に着目し、その制度的な側面を分析した。1865年に画期的な土地改良組合法が制定されたが、そこで許可組合と強制組合といったものが、どのような扱いになっているのかを明らかにするために、フランス官報や、当時、出版された行政法に関する辞典、法律に関するマニュアルを収集し、分析を行い、地域資源管理や災害対策の問題と関連付けてその意義を明らかにした。 また、土地改良組合の実態を分析するため、南フランス、オート=アルプ県のギャップの文書館で手稿史料を中心に収集し、さらに、県規則集や当時出版されたオート=アルプ県の農業や農村、急流河川、災害対策、灌漑に関する刊行物も利用しながら分析を行い、当地の堤防組合や灌漑組合の実態について明らかにした。堤防建設などを目的とする場合には、ある一定の多数の基準を満たすと、組合結成に対して不同意の者でも土地改良組合に参加を求められることになるが、こうしたことが紛争の火種にもなりえたことを、堤防組合の事例分析より明らかにした。
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