1.19世紀におけるフランス資本主義と南部山岳地に存在するオート=アルプ県における農業、農村の動向や相互の関連性などについて、既存の研究や同時代の著作などにより分析を行った。その中で、畜産業が重要であったことや19世紀の後半には農業が経済的な苦境に陥っていたことが判明した。 2.加えて、19世紀において重要な課題であったといわれている村落の資源管理に関しても、共同地や共同林の利用と管理、灌概施設の建設やその利用、荒廃山岳地の再生事業に着目して調査・分析を行った。その中でも、とりわけ、土地改良組合などの資源管理に関する史料について精力的に分析を行った。 3.また、これまで南フランス・オート=アルプ県の県庁所在地であるギャップの文書館において手稿史料を中心に収集、分析を行ってきたが、当地の農業生産、農村社会経済、資源管理、相続制度などの特徴をより鮮明に浮かび上がらせるため、フランス・アルプの中心地グルノーブルの文書館に赴き、分析を行った。それにより、アルプ地方レベルでは南北の地理的な条件や社会経済的な条件が異なっていること、重要な地域資源の内容や管理と利用のあり方にも相違が見られること、しかしいずれにしても、土地改良組合の設立や運営、農村地域の資源の利用と管理において、地域における有力者の役割が重要であったことを明らかにした。 4。こうした作業を通じて、19世紀フランス資本主義の展開の中で、農村における経済、社会は困難な状況にあったこと、そして、自然災害に対するための組織である堤防組合と灌概組合との間にぼ相違があるものの、土地改良組合の運営に際して地域の有力者たちが中心的な役割を果たしていたことを明らかにした。
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