研究概要 |
本研究の目的は,農業水利施設の維持管理作業への地域住民の参加行動を対象に,他世帯の参加動向が自己の参加決定に与える影響を計量経済手法により実証的に把握し,その結果をマルチエージェント・シミュレータに取り入れ,地域内の世帯分布や地域資源の維持管理に関する情報提供等により,各自の参加行動および地域全体の参加率の変化を解明することである。今年度の実施計画は,1)相互作用を考慮した計量経済モデルの計測のためのデータの収集を行い,地域住民の意思決定モデルを実証的に構築すること,および2)上記1で得られた意思決定モデルをマルチエージェント・シミュレータに取り入れるためのプログラミングを行うこと,である。 第1のデータの収集と分析については,前年度分に加えて茨城県,石川県,宮城県等の地域においてもデータを収集した。得られたデータを離散選択モデルにより分析し,個人特性(年齢,地域環境に関する理解度等)と維持管理作業条件(居住地から作業場所までの距離,作業時間等)が参加意思決定に与える影響度を定量的に明らかにした。 第2のマルチエージェント・シミュレータのプログラミングについては,第1の課題で得られた各地域の分析結果に基づいて,地域住民による地域資源の維持管理作業への参加意思決定モデルを暫定的に定式化してシミュレータに実装した。さらに,地域資源から産出される環境便益についても数値例的なものであるがシミュレータに実装した。そして,一部に仮想的な設定が残るものの,これらのエージェントを実装したシミュレータを使って地域住民の作業参加意思決定をシミュレートした結果,地域住民の維持管理作業への参加促進策を講じることで,地域資源の維持期間が延長する現象を再現できた。 以上の成果の一部を国内学会で報告する一方,平成19年度に開催予定の国際学会で報告するための準備およびエントリーを行った。
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