研究概要 |
本研究の目的は,環境保全型農法の普及で顕著に観察される,近隣者との情報交流などによる社会的相互作用が農法普及に果たす役割を検討することである。本年度は,先行研究のサーベイを行うとともに,環境保全型農法の一例として合鴨稲作農法を取り上げ,(1)環境保全型農法の農法伝播過程に関する定性的特徴の把握・検討,(2)農家の情報経路やネットワークが農法採択期間に及ぼす影響に関する分析,(3)情報交流活動が環境保全型農法による作付比率に及ぼす影響に関する分析を行った。 その結果,(i)環境保全型農法の追随者(follower)は先導者(innovator)と比較して,近隣農家の影響によって農法を始めた者が多いこと,(ii)農法普及の初期過程では,生産者組織による技術情報等の交換や人的交流が普及促進に寄与している一方で,農法が一定程度普及した後には,同一ないし近隣地域の農家からの学習効果が農法採択により大きな影響をもたらすこと,(iii)環境保全型農法と慣行農法による生産物の価格差が大きいほど,環境保全型農法の採択期間は短くなること,(iv)環境保全型農法の全国組織への所属が当該農法による作付比率の上昇に寄与しており,社会的相互作用は農法採択のみならず,採択後の作付比率の上昇にも寄与することがわかった。以上の(i)〜(iv)のうち,(iv)については学会誌にて公表済みである。(i)〜(iii)については,今後,関連学会での口頭報告や学会誌等を通じて公表する予定である。
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