房総半島におけるニホンザルの生息域拡大と獣害発生の関係を明らかにするために、アンケート調査を行った。アンケート調査の対象地域は、2003年に生息が報告されている地域および周辺5km程度とした。質問項目は、回答者の属性に加え、ニホンザルの個体又は群れの目撃の有無、頻度及び頭数、被害の有無および品目と程度、目撃や被害が始まった時期とし、9月〜10月にかけて207軒に対して配布・回収を行った。また、アンケート調査回答者のうち、ニホンザルによる農作物被害が有る農家4軒、被害が無い農家2軒に対して聞き取り調査を行った。 アンケートの回答数は64通で、回答率は30.9%であった。ニホンザルの目撃の有無については、有るという回答が40件、無いが22件、無回答が2件であった。初めて目撃した時期は、群れ、離れを問わず、調査範囲の周辺部で最近という報告が多かった。また、離れを目撃したのが20年前、もしくは20年以上前の場合、一例を除いて群れを目撃したという回答があった。群れの目撃と被害の関係であるが、2頭以上の群れでサルを見かけるという返答があった場合、2例を除いて、農作物に対する被害を受けていた。目撃頻度で見ると、月数回以上の目撃がある場合、全ての場合で農作物に対して被害があった。聞き取り調査では、「柵などを作ればいいのだろうが、資金が足りない」、「被害が出るのはしょうがない」等の意見が聞かれた。 以上から、房総半島では生息域の拡大に伴い被害が発生し、有効な対策がないために被害が激化する悪循環が起きていることが明らかとなった。 1/2500スケールでの土地利用図は、アンケート調査後に聞き取り調査を行った房総半島中西部の鋸南町江月地区と中東部の夷隅町宇筒原地区を対象として作成中である。これらの成果を用いて、土地利用の選択性を解析中した。
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