研究概要 |
最終的な目標は,現段階で公開可能な生産履歴情報に加え,農水省の意識調査の結果,消費者が求めていることが示唆された栄養成分含有量,食味,保冷情報といった消費者志向の農産物の品質情報を付加した,新トレーサビリティシステムを構築することである.その前段として本研究では,流通過程における農産物の品質変化量の把握が可能となる定量化モデルを構築することを目的とする. 平成17年度は,温度および酸素濃度を環境要因とし,それらの種々の条件下での農産物の品質変化量の指標となり得る呼吸予測モデルの構築を試みた.通気式呼吸測定法を用いて,4段階の定温条件の下,酸素濃度を4段階設定し,各温度および酸素濃度条件におけるイチゴ果実,ナス果実の呼吸速度を測定した.その結果,それぞれの呼吸速度は,ミカエリス・メンテン型呼吸予測モデルに適合可能なことが明らかとなった.また,各温度におけるミカエリス・メンテン型呼吸予測モデルのパラメータである最大反応速度およびミカエリス定数の温度依存性を検討したところ,最大反応速度にはアレニウス型の温度依存性がみられるのに対し,ミカエリス定数には温度依存性がないことが明らかとなった.また,これまでに公表されている呼吸データに対し,このモデルにて再計算したところ,多くの青果物で同様の結果が得られた.以上のことから,青果物の呼吸の酸素濃度依存性および温度依存性を表現するために,ミカエリス・メンテン型呼吸予測モデルは有効であり,今後の予定である内容成分変化量との相関をみるための基礎となることが明らかとなった.
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