研究概要 |
赤外線加熱を利用した青果物の表面殺菌の可能性を見極めるため、平成17年度は、1)表皮が比較的強固な青果物であるカンキツ(ハッサク)の表面殺菌および殺菌後の貯蔵期間の延長、2)ハッサク表面より分離した糸状菌(属種未同定)およびPenicillium属菌(P.digitatum, P.italicum)に対する赤外線の殺菌効果を検討した。ハッサクの表面殺菌効果は室温静置状態での腐敗果の発生程度を外観観察によって評価した。また、分離および指標菌に対する殺菌効果は、カンキツ表面の水分活性環境で平衡させた殺菌対象菌の分生胞子に対して直接赤外加熱処理した(水和状態ではない)後、ポテトデキストロース寒天培地を用いた平板培養による菌数測定によって評価した。 950nmにエネルギーピークを示すヒータによって30秒間処理することで、腐敗の発生を約3週間遅延させることが可能であったが、60秒以上処理すると、ヤケに起因すると思われる変敗の発生が顕著であることが示された。以上の結果から、適当な照射条件を見極めることで、カンキツ等、比較的強固な表皮構造である青果物の表面殺菌に赤外加熱は有用である可能性が示された。また、更なる貯蔵期間の延長は、他の殺菌技術・静菌法との併用によって目指すことが可能と思われる。一方、分離・指標いずれの菌に対しても、15〜18秒程度で90%以上死滅させることが可能であった。この場合、高い水分活性で平衡させた分生胞子は赤外加熱に対する抵抗性が高くなる傾向を示したが、ヒータから放射される赤外線のエネルギーピークの違いが抵抗性の変化に及ぼす影響は明確ではなかった。
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