本年度は冷殺菌の一つである紫外線(UV)照射を併用し、殺菌効果と貯蔵期間の延長を試みた。実施内容は、1)ステンレス表面に塗布した糸状菌に対する殺菌効果の検討、2)1)で使用した糸状菌をカンキツ表面に塗布し、その殺菌効果および貯蔵期間の延長効果の検討、である。1)については、ウンシュウミカンより分離した糸状菌を用い、IRとUVの併用殺菌を試み、PDA培地による平板培養法によって評価した。その結果、IR感受性が高いグループ、UV感受性が高いグループに大別できた。また、組み合わせ処理した場合、IR感受性種、UV感受性種ともに、効果的な殺菌が可能であった。すなわち、IR感受性、UV感受性問わず、IRあるいはUVのどちらを先んじて照射処理を施しても、前者ではIR単独処理の効果、後者では、UV単独処理の効果と同等、あるいはそれ以上の効果を示す場合も見られた。また、同時に処理を施しても、高い殺菌効果が得られた。このメカニズムに関しては、今後詳細な検討が必要であるが、IRの殺菌機構、UVの殺菌機構それぞれが、お互いの長所を阻害することなく影響を及ぼした可能性が高い。以上のように、組み合わせることによって、農産物や食品等、試料表面あるいは試料表面付着微生物の特性に応じ、熱および紫外線負荷を低減し得る処理法の開発が期待できる。今後、詳細なメカニズムの解明とともに、様々な試料に対して、種々の組み合わせを検討する予定である。次に2)では、糸状菌について、表面に針キズをつけたウンシュウミカンに接種し、IRおよびUV処理による腐敗防止効果を検討した。その結果、無照射サンプルと比較して、IRとUVを組み合わせた場合、一週間以上の腐敗遅延効果を示したが、IRのみの処理では、60秒程度の処理でも表面にヤケを生じて商品性を失ったことから、UVの割合を上げる等、処理方法に工夫が必要であると考えられた。
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