研究概要 |
本研究は,これまで考慮されていなかった明期開始直後の気孔が全開するまでの光エネルギの有効利用の可能性について,明期開始前後の光照射方法を検討し,気孔の応答と光合成活性の観点から明らかにすることを目的とした。本研究では観葉植物であるポトス(Epipremnum aureum)を光,温度,湿度及びCO_2の制御可能な照明付きインキュベータ内で成育して計測を行った。この中に顕微鏡とTVカメラを組み合わせた装置を設置し,葉は可動ステージに固定してピント合わせと位置合わせは外部から遠隔操作によって行った。これら現有の設備に,今回購入した超小型炭酸ガス分析計(LICOR社製LI-820)を組み合わせて,気孔開度と光合成速度としてCO_2固定量を計測した結果,以下の知見を得た。 1.光合成速度の安定した連続光下で一旦消灯し,光合成速度が0になった時点で再点灯を行い気孔開度の制約のない状態での光合成速度の立ち上がりを計測したところ,28%/minで直線的に応答した。 2.点灯から30分間の光合成速度を計測したところ,気孔開度と同期して4.7%/minで増加した。このことから,点灯直後は気孔開度が光合成を制約していることが確かめられた。 3.これまでの研究で10分間の点灯を行うことで連続光下と同様の開孔をすることが明らかになった。そこで,10分間点灯消灯し20分後に再点灯を行ったときの光合成速度を測定したところ,通常時に比べ1.35倍の光合成量を得た。 4.ただし,この場合10分間余分に点灯を行っているので,エネルギ投入量は増加している。そこで点灯時間当たりの光合成速度を算出し比較を行ったところ,8%分の光エネルギを有効に利用できることが分かった。
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