家畜排泄物の処理、及び資源回収法として水素発酵が注目をされている。水素発酵には単離された水素生産菌を種菌として接種する純粋培養系と、堆肥や活性汚泥、嫌気性消化汚泥などを純化することなく種汚泥としてそれらに含まれている微生物群を利用する複合培養系がある。複合培養系では、原料の滅菌が不要である利点があり、家畜排泄物などを原料とした場合に適している。複合系水素発酵の機能改善・メカニズム解明のためには、発酵に関与する微生物群の解析が必須である。近年、分子生物学的手法による有力な菌叢解析法として、16SrDNA領域の多型を利用したDenaturing Gradient Gel Electrophoresis(DGGE)法が開発されている。そこで、乳牛糞尿スラリーからの水素発酵に関与する微生物群の菌叢をDGGE法にて解析を試みた。 60℃で4日間培養した乳牛糞尿スラリーと、コントロールとして培養前のスラリーをDGGE解析の試料とした。それぞれの試料の遠心分離を行い、沈澱画分を洗浄の後回収した。その飼料から塩化ベンジル法にて微生物DNAを回収し、さらにFastDNA kitにて精製を行った。精製されたDNAを鋳型として、16SrDNA領域をPCR法にて増幅した。その16SrDNAを30-60%尿素/ホルムアミドのグラジエント変性剤を含む10%アクリルアミドゲルにて電気泳動条件を行った。その結果、十分な数のバンド(それぞれ10本以上)が出現し、培養後スラリー特異的なバンドも複数含まれていた。本DGGE条件にて乳牛糞尿スラリーに含まれている微生物群の菌叢解析が可能であることが分り、また、培養後スラリー特異的なバンドの中に水素生産に関与する細菌のバンドが含まれている可能性が推測される。全てのバンドのDNA配列を決定することで、乳牛糞尿スラリーの水素発酵の理解が得られると考えられる。
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