研究課題
犬の精液保存については、低温(4℃)保存後の受精能(透明帯侵入能)を簡便に確認できる方法を開発するため、マウス、牛、豚の卵子と、犬精子を共培養して、精子の透明帯への付着および侵入を検討した。その結果、牛や豚の卵子に比べて、マウス卵子が犬精子の透明帯侵入能を評価するのに適していることが示された。この方法を用いて、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を添加および無添加の保存液で犬精子を低温保存した場合、BHTを添加して保存した精子の方がマウス透明帯への侵入能が高いまま維持されていることが明らかとなった。猫の体外受精系の確立については、昨年度明らかにした30時間成熟培養を行った猫卵子を用いた媒精方法の検討を行った。その結果、牛などの動物とは異なり、媒精開始後6時間にはほとんど全ての卵子で受精が完了し、前核形成が認められることがわかった。また、6時間以上媒精を継続すると多精子侵入が増加することもわかった。アムールトラの人工授精については、今回初めてホルモンによる発情誘起を行った。PMSG投与により雌トラの発情は誘起され、投与から5日後の人工授精時には卵巣内に直径1cm程度の発育卵胞が確認できた。電気刺激により、活力の高い精子が得られ、経腟で人工授精を行った。受精結果は本年6月に判明する。本研究により、犬精子の保存後の受精能検査法が開発され、冷蔵保存にはBHTの添加が有効であることが判明した。また、従来行われてきた猫体外受精の改善点が明らかとなり、猫科動物の体外受精系の改良・開発に有意義な情報を提供した。これらを野生動物の入工繁殖へ応用するためには、一日も早く成功例を報告し、数多くの症例を集めることが重要である。
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