哺乳類卵巣卵胞の選抜を人為的に支配する技術の確立の第一段階として、卵胞制御に深く関わっている、アポトーシスシグナル伝達因子であるブタCaspase-8、FADD(Fas Associated Death Domain)のクローニングを行った。その結果ブタCaspase-8は1431bp、476aa。FADDは636bp、211aaであった。またブタとヒトとの相同性はCaspase-8で71.8%、FADDで74.4%、マウスとの相同性はそれぞれ63.4%と63.5%あった。解析した遺伝子とGFPを共に組み込んだプラスミドベクターを作製し、培養顆粒層細胞にトランスフェクションした。Caspaseインヒビターであるp35遺伝子を共発現させたものとGFP陽性細胞の数を比較することにより細胞死誘導能を検討したところ、ブタcaspase-8、ブタFADDともにヒト由来、マウス由来の培養顆粒層細胞でアポトーシス誘導能が確認でき、アポトーシス伝達因子の種を越えた高い保存性が認められた。発現効率は細胞によって異なったが、初代培養顆粒層細胞での発現効率はかなり低いため今後の検討が必要とされる。さらに細胞死受容体を介したアポトーシス制御因子の一つであるBidのブタ卵巣におけるmRNAならびにタンパクの発現変化を調べたところBid mRNAは顆粒層細胞にのみ局在がみられ、mRNA、タンパクともに健常卵胞の顆粒層細胞において高く発現し、退行に従い発現が減少していった。このことより卵胞退行に従い、Bidが活性型のtBidに変換されミトコンドリアにアポトーシスを誘導していると考えられる。またブタBid遺伝子もCaspase-8、FADDと同様ヒト、マウス由来の顆粒層細胞でアポトーシス誘導能が確認できた。
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