B細胞のT細胞依存性免疫応答に必要なシグナル伝達因子をクローニングすることを目的として計画された本研究の今年度は、まず、B細胞の免疫応答に必要な転写因子であるNF-κBに反応するリポータープラスミドとして、3xNF-κBモチーフの下流にPuromycin耐性遺伝子を組み込んだプラスミドを作製した。このプラスミドを、最終的にレトロウイルスによる遺伝子クローニングを行うのに用いるマウスB細胞株に遺伝子導入し、安定発現細胞株を得た。この細胞株は、B細胞抗原受容体刺激がない場合にはNF-κBの活性化がおこらないため、抗生物質Puromycinにより死に至るが、B細胞抗原受容体刺激によるNF-κBの活性化に伴い、Puromycinに耐性となることを確認した。 さらに、B細胞のT細胞依存性免疫応答に必要なシグナル伝達因子をクローニングするためのレトロウイルス発現cDNAライブラリーの作製を試みた。cDNAライブラリーは、T細胞刺激をミミックするために、正常Balb/cマウス由来のナイーブB細胞をCD40リガンドによりin vitroで一定時間刺激し、抽出したmRNAよりcDNAライブラリーを作製した。このcDNAライブラリーをレトロウイルスベクターに組み込み、先ほどの細胞株にウイルス感染後、Puromycinにより選択培養し、この過程を3回繰り返した。しかしながら、その間に細胞はすべて死滅してしまい、NF-κB依存性にpuromycin耐性となったクローンを得ることができなかった。これは、ウイルスライブラリーのタイターが十分高くないためライブラリー中の機能をもつ遺伝子をクローニングするのが困難であったか、またはB細胞のT細胞依存性免疫応答に対して機能を発揮するのは、CD40リガンドで発現増強される遺伝子ではなく、既に存在する遺伝子の翻訳後修飾等によって行われていることを示唆していると思われた。
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