研究概要 |
グラム陰性菌のリポ多糖体(LPS)により、活性化マクロファージ内で展開される翻訳調節・調整の役割および分子機構を明らかにするため以下の検討を試みた。 1.LPSにより翻訳調節をうける遺伝子のリスト化 大腸菌LPSで刺激したマウスマクロファージ様細胞株J774より細胞質溶液を調製し、ショ糖密度勾配法により翻訳状態にあるpolysome RNAおよび、翻訳状態にないfree mRNPを分離した。これらからmRNAを調製し、Affymetrix社のGeneChipを用いて、アレイ解析を行い、polysome画分でのみ変動する300余のmRNAと、polysomeで減り、free mRNPで増える700程度のmRNAを同定した。ともに画分特異的に変動が見られたことから翻訳段階で正・負に調節されていると考えられる。また、これら調節をうけるmRNAの構造的特徴をin silicoの系で調べた。その結果、刺激に依存し翻訳が活性化するものは、長い翻訳領域、非翻訳領域を持つのに対し、翻訳が抑制されるものはいずれも短いことが分かった。また、翻訳が抑制されるものは有意にAU-rich elementを欠いていることが判明した。 2.各種キナーゼの関与の検討 翻訳調節にはmTORによるmRNAの5'構造に依存した調節系と、MAPKによる3'構造に依存した調節系が広く知られている。J774細胞にLPSを加えたところ、mTORの活性化は見られなかったが、p38,ERK,JNKなどのMAPKの活性化は見られた。今回同定した翻訳調節を受けるmRNA群の挙動に対するこれらキナーゼ類の関与を検討し始めたところである。
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