研究概要 |
1、LPSのミトコンドリア呼吸鎖タンパク質に対する翻訳抑制効果のメカニズムの検討 前年度までの検討により、マウスマクロファージ様細胞をLPSで刺激するとミトコンドリア呼吸鎖タンパク質が翻訳抑制を受けることを見出したが、本年度は抑制のメカニズムについて検討した。まず一酸化窒素(NO)の関与を考えたが1)NO産生に先立ち、翻訳抑制が見られること、2)NO合成酵素阻害剤が翻訳抑制を解除しないことから否定された。さらに前年度に引き続き、LPS刺激時に翻訳抑制に関わるキナーゼの同定を試みたところ、特定のMAPキナーゼが一定の役割を果たしていることを見出した。一方、miRNAアレイを用いた検討からLPS刺激後複数のmiRNAに変動が見られ、これらが翻訳抑制に関わっている可能性も示唆された。 2、膜結合ポリゾーム発現プロファイル解析 前年度確立した膜結合ポリゾームの調製法を用いて、LPS刺激前後で膜結合ポリゾームのマイクロアレイ解析を行い、約3,600のmRNAが膜結合ポリゾームで膜・分泌タンパク質の合成に供されていた。また、LPS刺激後変動の見られたmRNAのうち約150個はtotal RNAでは変化が見られず翻訳制御を受ける可能性が示唆された。多くの機能未知タンパク質をコードするものが含まれており、翻訳調節という新たな視野から新規のLPS応答に貢献する候補分子を同定した。 3、翻訳調節分子解析のための細胞系の構築と解析 翻訳調節に関与する調節タンパク質やmiRNAの機能解析のために、マクロファージ細胞株でテトラサイクリンにより導入遺伝子を発現誘導する細胞株を構築した。また前年度明らかにした正の翻訳制御因子としてのJNKの役割を調べるために、JMK1及びJNK2のshRNAの安定発現マクロファージ株を樹立するとともに、それらにおける翻訳抑制を確認し、翻訳制御タンパク質群のリン酸化状態の変化を調べた。
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