研究課題
Babesia equiおよびBabesia caballiによるウマバベシア症は、貧血や血色素尿症をはじめとする重篤な症状を引き起こし、世界的に甚大な被害をもたらしている。本原虫の赤血球侵入メカニズムを解明することは、いまだ立ち後れているワクチン開発に有用な情報を提供すると考えられる。そこで、我々はウマ赤血球側のレセプター候補を探索することを目的として、赤血球表面のシアル酸に着目し、以下の実験を行った。まず、ウマ赤血球をノイラミニダーゼで処理し、赤血球表面シアル酸への影響を調べた。フローサイトメトリーにより、ノイラミニダーゼ処理赤血球表面におけるシアル酸の減少が認められた。また、PAS染色およびレクチンブロットにより、赤血球膜貫通糖蛋白質グライコフォリンに含まれるα2-3結合シアル酸の除去が確認された。次に、このシアル酸除去赤血球を80%含む赤血球を用いてBabesia equiおよびBabesia caballiのin vitro培養を行ったところ、いずれの原虫においてもその増殖は前処理に用いたノイラミニダーゼ濃度に依存して強く阻害された。さらに、Babesia caballiの無血清培養液中に3'シアリルラクトース(α2-3結合シアル酸含有)、6'シアリルラクトース(α2-6結合シアル酸含有)あるいはラクトースを添加すると、3'シアリルラクトースにおいてのみ20%程度の顕著な原虫増殖抑制が認められた。以上のことから、Babesia equiおよびBabesia caballiの赤血球侵入メカニズムには、宿主グライコフォリンに含まれるα2-3結合シアル酸が関与することが強く示唆された。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (1件)
Experimental Parasitology 110
ページ: 406-411