本研究では、プリオン増殖機構の核である正常型プリオン蛋白質(Prp^c)→異常型プリオン蛋白質(Prp^<Sc>)の変換機構に関与するPrp^c側の要因を解明することを主要な目的とした。これまで、内在性Prp^cによる阻害効果が障壁となっており、プリオン増殖に必要なPrp^c領域の解析は進展していなかった。申請者らはごく最近、プリオン蛋白質(PrP)遺伝子欠損マウスから作製したPrP遺伝子欠損マウス由来神経細胞株を用い、Prp^cの機能部位および機能活性を明らかにした。本研究の特色は、そのような技術的な改良を背景に、プリオン感染の必須因子であるPrp^cを標的とした解析に焦点を絞った。平成18年度はハムスターPrP遺伝子をPrP遺伝子欠損マウス由来神経細胞株へ導入した細胞株にハムスタースクレイピープリオンを感染させることで、異種PrP遺伝子の導入が種を超えたプリオンの増殖・持続感染を可能にするかをしらべた。具体的には、平成17年度に作成したハムスターPrP発現PrP遺伝子欠損マウス由来神経細胞株にハムスタースクレイピープリオンを感染させた。その結果、ハムスターPrP発現PrP遺伝子欠損マウス神経細胞株では、ハムスタープリオンの持続感染は成立しなかった。
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