研究概要 |
本研究課題では,コレラ毒素B鎖(CTB)の粘膜デリバリー分子としての機能向上を目指し,ヘテロ5量体形成という新しい方法でそれが達成可能であることを立証した(Harakuni et al., Infect Immune 2005;73:5654-65).即ち,CTB/ワクチン融合分子とCTB非融合分子を同一細胞内で共発現させることにより,非融合CTB分子が「分子バッファー」として機能し,5量体内の分子間相互干渉を有意に減少させた.また,ヘテロ融合法は5量体の会合効率を向上させるだけでなく,融合分子のコンパクト化を促すため,発現細胞外へ効率よく分泌され,アフィニティーカラム等を用いた蛋白精製の際極めて有利に機能することが分った.以上の結果は,発現系として酵母(Pichia pastoris)を用い,感染症のモデルとして日本脳炎を用いた実験から明らかとなった.今回我々は,この方法論が特定の発現系やワクチン抗原に限定されない汎用性の高いものであるという仮説を立て,DNAワクチンへの応用を検討した.モデル抗原としてマラリア伝搬阻止ワクチン候補抗原(Pfs25及びPvs25)を使用し,数種類のヘテロ型CTB融合DNAワクチンプラスミドを構築した.これらのプラスミドを293細胞にトランスフェクションすると,酵母発現系と同様,ヘテロ型分子はホモ型分子と比べ効率よく細胞外へ分泌発現されることが確認された.細胞壁をもつ酵母ともたない哺乳動物細胞で同様な現象が確認されたことは,このヘテロ融合法の汎用性を示すものであると結論づけた.今後,筋肉内注射や遺伝子銃を用いたDNAワクチン投与法により,免疫原性の違いをコンストラクトごとに解析し,分泌型融合分子(ヘテロ型)が非分泌型及び微量分泌型分子(ホモ型)と比べ高いワクチン効果を有するか否かを検討する.この分泌型融合分子の特徴は,ワクチンプラスミドが取り込まれた細胞内で発現され,一旦そこから細胞外に放出されることでG_<M1>ガングリオシドを介して再度(paracrine的に)近隣の細胞,特に樹上細胞等に取り込まれる可能性があると考えられ,ワクチンとして有利に機能すると考えている.来年度はこの点を検討する実験を進める.
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