1.In vitro研究 実験用ビーグル犬の上腕骨から骨髄液を、鼠径部から脂肪組織を採取し、各組織由来間葉系幹細胞の培養を開始した。現在までに、幹細胞の回収方法、増殖用培養液および骨誘導培養液に関する至適条件を確認し、そのプロトコールを作成した。現在、脂肪由来の幹細胞と骨髄由来の幹細胞の特性を比較検討するために、増殖能力(DNA量の測定)および分化能力(カルシウム量の測定)の評価を行っている。特に、同一個体から採取した各細胞の比較を行い、検討を重ねている。 2.In vivo研究 脂肪由来幹細胞の骨癒合促進能力に関する検討を行った。実験用ビーグル犬の脛骨を利用した骨切モデルを作成し、右側肢骨切部周囲にはコラーゲンゲルに播種した脂肪由来幹細胞を移植し、左側肢にはコラーゲンゲルのみを移植した。X線検査を2週間隔で撮影し、外仮骨の形成を評価した。その結果、細胞を移植した側のほうが、より早期に外仮骨が形成され、より早期にリモデリングへ移行する傾向が認められた。今後は臨床的に重要となる骨欠損モデルに対して、人工骨とともに移植する実験を行い、臨床的な効果に関して評価する予定である。 3.臨床的研究 骨癒合遅延の認められた動物症例(犬および猫)に対して、骨髄由来幹細胞を利用した再生治療を実施した。各動物は以前に骨折・整復手術した部位に癒合遅延が認められた症例であり、再手術の際に採取した骨髄由来幹細胞を術後数回に分けて骨折部周囲に注入移植した。その結果、各症例は良好な骨修復を示し、その成果の一部を獣医麻酔外科学会にて発表した。
|