担子菌Phanerochaete chrysosporium由来CDHおよび子嚢菌Humicola insolens由来CDHのアミノ酸配列の相同性比較を行うとともに、P.chrysosporium由来CDHのフラビンドメインの三次元構造(PDBID=1NAA)をもとに、pH依存性に関与すると考えられるアミノ酸を推定した。Q734に部位特異的変異を導入した3種の変異体(Q734S、Q734T、Q734H)をコードするcDNA断片を、オーバーラップ伸長法とアダプタープライマー法を組み合わせた手法によって作成した。得られたcDNA断片をメタノール資化性酵母用のベクターに挿入し、組換え酵素を生産した。菌体外液から精製して得られたそれぞれの変異体酵素によるユビキノン還元活性のpH依存性を比較するとともに、pH4.0および7.0におけるセロビオースに対する反応速度定数(Km、k_<cat>)および基質阻害定数(Ki)を算出した。その結果、大量発現を試みた変異体のうち、Q734SとQ734Tが活性型タンパク質として生産された。精製された野生型および2種の変異体の可視紫外スペクトルを比較したところ、フラビンに特徴的なピークが観察されたことから、変異体は補欠分子族を分子内に含んでいることが確認された。2種の変異体によるユビキノン還元活性を野生型のそれと比較したところ、Q734Sでは酸性側で活性が顕著に減少したのに対し、Q734Tでは最大活性値はほとんど変化せずに至適pHが酸性側にシフトしていることが明らかとなった。さらにpH4.0および7.0におけるKm、k_<cat>、Kiを比較したところ、k_<cat>以外の定数にはほとんど変化がなかった。これらの結果は、Q734が本酵素のpH依存性に深く関与していることを示しており、セロビオースに対する親和性の変化ではなく、フラビンのN(1)またはC(2)の電荷が変わることで酸化還元反応のpH依存性が変化すると考えられた。これらの成果を第56回日本木材学会大会で発表した。 さらにセロビオース脱水素酵素を用いたセルラーゼ活性の測定にも着手し、固液界面における酵素反応を速度論的に解析した。
|