研究課題
本研究で用いたスエヒロタケを含め、多数の真性担子菌で強く発現することが知られているハイドロフォービン遺伝子(Sc3)のプロモーター領域を詳細に解析するため、全長3500bp長のプロモーター領域を上流から段階的に削除した。各プロモーター配列をマーカー遺伝子であるEGFPと連結して遺伝子発現ベクターとし、各ベクターをそれぞれスエヒロタケに遺伝子導入した。真性担子菌における遺伝子導入実験では、外来遺伝子は染色体上のランダムな位置に挿入され、その位置効果(position effect)により遺伝子発現効率が大幅に変動する。そのため、EGFP遺伝子が染色体上に挿入された形質転換体を可能な限り多数回収し、統計的処理によって各プロモーターの遺伝子発現効率を比較した。一種類のベクターにつきそれぞれ30〜100個の独立した遺伝子導入クローンを回収し、それぞれの蛍光強度を測定した。解析の結果、転写開始点から-900bp〜-1400bp付近に導入遺伝子を高発現する領域が存在していることを見出した。次にこの領域を含むプロモーター配列をそれぞれ2回、3回タンデムに連結したプロモーターを構築し、導入遺伝子発現能力がどの程度向上するかを検討した。その結果、2回連結したプロモーターは、元々のプロモーターと比べ4倍程度遺伝子発言力が増加したが、3回連結したプロモーターとの差はほとんど見られなかった。しかしながらこの2回連結したプロモーターは、配列改変前の3500bp長プロモーターよりも遺伝子発現力が強いことから、今回用いたプロモーター改変手法により、真性担子菌用の遺伝子発現ベクターを改良できることが示された。
すべて 2005
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Bioscience, Biotechnology and Biochemistry 69(12)
ページ: 2333-2342