前年度に行ったスエヒロタケSc3プロモーターのプロモーターアッセイによって得られたデータを詳細に解析したところ、転写開始点の上流-1030bp〜-1415bpの領域に強い転写活性が見出された。発現量に大きく影響すると予想される領域400bpを繰り返しスエヒロタケ用遺伝子発現ベクターに挿入することで、1〜4回この領域が繰り返される発現ベクターを構築した。 一方、nativeなSc3プロモーター(3.5kbp)に他真性担子菌由来の有用酵素を発現させることが可能かどうかの検証を行った。静岡大学の研究グループにより見出された、高分子リグニンの分解力が高い新規リグニンペルオキシターゼ(YK-LiPs)をスエヒロタケに発現させる実験を行うため、最初にYK-LiPsのクローニングを行った。YK-LiPsのN末端20残基のアミノ酸を解析し、得られた配列を元にdegenerate PCRを行って二種類の遺伝子断片を得た。その配列情報を元に3-RACE、5-RACE等を行って全長genomic DNA、及び全長cDNAを得て、両遺伝子をそれぞれYK-LiP1、YK-LiP2と命名した。その後、Sc3プロモーター(3.5kbp)に、YK-Lip1、YK-Lip2のcDNAを結合した遺伝子発現ベクターを構築した。スエヒロタケにおいては、スエヒロタケ自身のイントロンを持たない遺伝子(cDNA)は発現しないことが知られているため、スエヒロタケ自身のキシラナーゼgenomic DNA(イントロン含む)をYK-LiP1、YK-LiP2のcDNAとinframeで結合させ、融合遺伝子としてスエヒロタケに形質転換した。形質転換体はある程度キシラナーゼを高発現し、またYK-LiP1、YK-LiP2のmRNAが発現していることはRT-PCRで確認できたが、それらの菌株の培養上清にはYK-Lips活性は見られなかった。
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