オートファジーとは、真核細胞において、非特異的に細胞内に存在するオルガネラやタンパク質を分解するシステムである。オートファジーに関する研究は、酵母におけるオートファジー関連遺伝子が同定されて以来、その分子機構が急速に解明されつつあり、単に栄養飢餓状態の防御機構というだけでなく、細胞の発達過程などにおいても重要な役割を持つことが考えられている。一方、担子菌(キノコ)類は、顕著な形態変化を伴う生長過程を持ち、その過程は、光、低温、栄養飢餓などの要因により巧みにコントロールされている。本研究では、担子菌類におけるオートファジー発現機構の解明を目的として、平成17年度は以下の研究を行った。 まず、ゲノムプロジェクト情報に基づき、オートファジーにおいて重要な役割を果たすAtg8のホモログcDNA(Ccatg8)を担子菌Coprinus cinereusより取得した。解析の結果、取得したホモログ(CcAtg8)は他生物の同タンパク質と極めて高い相同性を有することが明らかとなった。また、Saccharomyces cerevisiaeにおいてAtg8は栄養飢餓状態にシフトすると転写レベルで強く発現することから、CcAtg8についても同様の解析を行った。その結果、Ccatg8のノーザンハイブリダイゼーションシグナルは、C.cinereus菌体を栄養飢餓状態にシフトすると上昇し、その後、6時間後には下降して行くことが確認され、CcAtg8の転写レベルでの発現制御機構の存在が示唆された。 さらに、S.cerevisiaeの野生株および胞子形成能を欠損したAtg8破壊株を用いて、CcAtg8の機能解析(胞子形成能の検討および緑色蛍光タンパク質を用いた局在解析)を行った結果、CcAtg8は、S.cerevisiae Atg8の働きを相補することが確認された。
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