オートファジーとは、真核生物に存在するタンパク質分解機構の一つであり、オルガネラやタンパク質を包み込むオートファゴソームと呼ばれる膜を介したバルクな分解系である。本研究では、担子菌Coprinus cinereusにおけるオートファジーの発現機構について明らかとするため、同機構のマーカーと考えられており、オートファジー誘導時において液胞に取り込まれるオートファゴソーム構成タンパク質Atg8に焦点を当て、その解析を行った。 まず、C.cinereus由来のAtg8ホモログ(CcAtgB)の機能について、出芽酵母のATGB破壊株が示す性質を指標に解析を行ったところ、CcAtg8cDNAを導入した破壊株では、出芽酵母野生株と同様の性質が観察され、CcAtg8が出芽酵母内においてAtg8として機能していることが示唆された。また、C.cinereus中におけるCcAtg8遺伝子の転写レベルでの発現解析の結果、同遺伝子は窒素源飢餓条件下でその転写量が増加することが観察された。 次に、C.cinereusにおけるオートファジーの誘導条件について、緑色蛍光タンパク質(GFP)を指標としたCcAtg8の局在から解析を行った。C.cinereusより単離したCcatg8プロモーター領域の下流に、GFP遺伝子とCcAtg8cDNAを組み込み、GFP-CcAtg8融合タンパク質を発現させるようなプラスミドを構築し、C.cinereusへ導入した。解析の結果、目的遺伝子が導入された形質転換株では、窒素源飢餓およびラパマイシンの添加により、早い段階での液胞中への緑色蛍光の蓄積(液胞へのGFP-CcAtg8の移行)が観察された。このことは、担子菌C.cinereus中において、オートファジーが窒素源飢餓やラパマイシンの添加で強く誘導されることを示唆するものである。
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