研究課題
分泌蛋白質または膜蛋白質は、機能するべき場所へ正確に輸送される必要がある。そのためには運ばれるべき蛋白質の選別が重要となるが、その機能を担うと思われる有力な候補がp24蛋白質ファミリーである。そこで、その重要性は確かであることが知られていながら、実際の機能がほとんど解明されていないp24蛋白質の役割を、カーゴの選別という側面にしぼって、明らかにすることを目的として研究を行った。まずは細胞内におけるp24ファミリーに属する4種の蛋白質の発現をそれぞれ抑えるためRNA干渉法を試みた。すると、4種のうちβ、δの発現を抑制すると複合体の他の因子も細胞内から消失することがわかり、複合体を形成することが安定性と機能に必要であることがわかった。一方で、p24の発現を抑制するとゴルジ体が小胞化し細胞内拡散してしまうことがわかった。つまり、p24はゴルジ体という細胞内小器官の構造維持のためにも必要であることが初めて示された。更に蛋白質の細胞内輸送の効率を計測したところ、p24の発現を抑制した細胞では膜蛋白質の輸送は通常通りであるにも関わらず、GPIアンカー型蛋白質の輸送が著しく遅延していることを明らかにした。これはp24がカーゴのうちGPIアンカー型蛋白質の選別に大きく関わっていることを示す。さらにカーゴとしては不適切なまだ完全に折り畳まれていない蛋白質の細胞内での寿命を計測したところ、p24の発現を抑制した細胞では非常に短くなっていることがわかった。これはp24が小胞体における品質管理を実際に行っているという強力な証拠となる。以上のことを総合すると、p24は小胞体において輸送するべき蛋白質とまだ輸送してはいけない蛋白質を選別し、実際に小胞に積み込むステップで重要な働きをしていることがわかった。さらにこの蛋白質がどのように分子を選別するのかを相互作用する蛋白質の解析を通して明らかにすることが今後の課題となる。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (1件)
Molecular Biology of the Cell 17
ページ: 3964-3977